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2021/09/06

どうなる教員免許更新制5 制度改定思い出話、そしてどうなる更新講習

Tweet ThisSend to Facebook | by 星槎大学 事務局

2021年9月6日

 8月の1day講習に続いて、9月5日に1day講習の3回目も開講した。1day講習とは基本通信教育である。必要な学習はほぼテキストで実施する。そのうえで、オンラインの30時間の範囲をカバーする遠隔講習を1日受講し、必修領域、選択必修領域、選択領域の修了試験を受験するのである。この講習の良さは、受講者アンケートなどから見るに、①自宅で受講できること ②他者に制限され拘束される日程は1日で済むこと ③講座内で受講生の事前アンケートの内容に応えてくれること ④全国に広がったみんなで受講できる安心感があること ⑤GIGAスクールを実際に体験できた気がする ⑥主体的な学習で学びが深まった などがあげられていた。
 その更新制度であるが、先日の小委員会の「審議のまとめ(案)」を受けての大臣会見など見るに、省令で運用解決を図るのではなくて、教育職員免許法を改正する流れにしたいようだ。更新講習小委員会の審議は間もなく完了する。久々に不祥事がらみでない、文部科学省関連の情報が新聞紙面を飾ったが、この後しばらくは落ち着いて進行を見守る局面になった。さて、本コラム「どうなる教員免許更新制」もこのあたりで一段落つけたい。

 今の状況だと、最速で来年の通常国会で法改正になり、2023年度から更新講習がなくなる流れだろう。まずは、来年の通常国会審議がどのようになるか注目したい。なにしろ、制度開始の際の附帯決議に関して実行できていない中での制度廃止はどう考えても文部科学省に責任がある。このあたり、どう審議していくのやら。当たり前のことだが、1年で一歳の子どもは7歳にはならない。人口動態を考えれば全国の学級数などかなりの確度で予想できる。結果的に教員不足という状況になったのは、更新講習のせいなのか大いに疑問だ。加えて、今年度も更新講習を担当している者として、受講者からの「意義ある講習だった」という多くの声は埋もれさせてはいけないと感じている。
 なにはともあれ、2022年度末までに教員免許を更新すべき方は、今回の文科大臣の会見で講習受講が確定したことになるので受講忘れには注意してほしい。制度改正のせいで教員不足になったらそれこそ文科省の責任を問われる事態だ。加えて、今年度と来年度の講習は、廃止報道で講習キャンセルをした方もいたようであるし、コロナの状況で開講できなかった講習も相当数ある、コロナで確認期限延期を申請した方の修了期限も令和5年3月31日(2022年度末)までだ。これら状況を考えるに、申込が一時期に集中する可能性もあるので、お早目の受講をお勧めする。

 さて、制度を変えるときは、色々とあるものだが、ちょっとした更新講習に関わる思い出話を。教員免許更新制を実施するとき一番頑張った文部科学省の人間は、おそらくこの制度実施のために出向先の警察庁から急遽戻されたO課長だったと思う。
 1959年生まれの彼はどちらかというと太っ腹の親分気質の人であった。現在すでに文科省は定年退職済みで天下りはしていないようだが、天下りという言葉が似合わない印象がある方だった。
 この制度の担当部局であった、文部科学省初等中等教育局教職員課は、制度開始前年度9月、文科省の地下の映写室という小部屋で、主たる開設者である大学との意見交換会を断続的に小規模でやっていた。毎年のように教職課程の申請でそれなりの頻度で文科省に出入りしていた私は、その会に参加してほしいと要請された。多分O課長の策略もあったと思う。意見交換会の折、O課長は参加していた大学の担当者に、それなりの勢いをもって開設を迫っていた。それもそのはず、開始前年度の開設申請は11月で、ここで十分な開設数を確保できなければ、この制度自体成り立たないのである。前年度制度の周知も兼ねて実施した試行事業予備講習も、実際にはさして大学は積極的に参加しなかったのだ。実際にまだ実施するかどうか決めていないなどと、直前の実施調査に回答する国立大学法人もあったりする中なのである。
 地下の映写室にその時集まったのはたしか、国公私立大学合計10校程度だったと思う。今やもう珍しくなったカバン持ちにM係長を従え、颯爽とオンタイムで我々の待つ部屋にやってきたO課長は、所定の位置につくや否や開口一番「皆さん開講に協力してくれるんでしょうね」と強い調子で語り始めた。参加者から質問が出た。大学名やしぐさからして元文科省職員という感じだ。「開講してくれと言われても、教員や会場や内容や受け入れシステムなど、準備がなかなか大変でして。」という消極的な発言には「だったらやっていただかなくて結構。協力していただける大学だってあるんだから。いざとなったら何人でも受け入れてもらえますよね、ねェ星槎(せいさ)さん」と私に相槌を求めるのである。期待されているのだか、ネタに使われているのだか。そんなところから、始まっていくのである。
 いやいや、あれくらい強面の方でないと、なかなか新たな制度は進まないものだ。その後O課長は制度を立ち上げ、2年して文化庁に異動された。正直、あの時の大変さは彼だからできたと思うが、その後の扱いはそう来たかと感じた。更新講習反対のドンがいる民主党政権下の人事異動でしたので。

 開設者目線でいくと、確かにあの時の文科省は初等中等教育局を中心にかなり大変そうであったが、更新講習に大学の協力を仰ごうと色々な提案をしてきた。
 一番印象に残っているのが、更新講習申込受付受講管理システムを大学負担0円で準備するという話だった。更新講習の受講料金は、国会の大臣答弁で「30時間3万円程度を想定している」などと言ってしまったため、その金額が基本となった。この金額は、受講申し込み、講座対応、証明書発行、受講記録管理など考えると、とても割に合わない金額になる。1時間当たり受講料1,000円では大学はなかなか動きにくい。そこで、システムは0円ですよと知らせてきたのだ。
 皆さんぜひ使ってください、という感じの触れ込みだったのであるが、どうも肝心のシステムが秋口になっても出来上がる様子がない。担当していたのは日立システムだったと記憶しているが、我々としてはあきらめて、自分たちで開発することにした。という感じで、たいがいの開設者はもう勘弁してほしいという感じだったのだ。
 受講する方もそうだが、開設する方もなかなかの状況だったわけなのである。

 あれから10年以上たち、今回の様に検討するのはとても重要なことだ。
 今回コラムを書くにあたって、当時の資料をひっくり返すと、当時内閣府が作ったPR動画が出てきた。コメントする中教審の専門家は今は亡き、玉川大学の山極先生だ。懐かしいので今回の思い出話の最後として紹介する。 https://youtu.be/mBl9j6QOzts



 ずいぶん話は変わるが、関連しつつ、現在の更新制度の検討につながることを。
 個人的には、教育再生会議や教育再生実行会議の名称がどうも腑に落ちない。その理由は「再生」という言葉だ。かつて、この言葉は「Back」という言葉で使われたこともある。「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」~ 日本産業再興プラン(成長戦略2013)からだ。どこに、BACKするのだ。これを考えたかたは、「時間を戻るのではなくて、日本は離れていた地位に戻ってきたのだ」ということをいいたいようであるが、日本語では「再興」なのである。それゆえに、私のように「みな、常に変化して、よくしようとしていることが必要なのに再興とは何ぞや、最高ならわかるが」という方はいるのではないかと想像する。
 そうはいっても、非常にスピーディーに検討して対応しているのは、これら会議でもあるのも事実だ。そこに対抗するかのように、1月19日に大臣のもとに設置された「『令和の日本型教育』を担う教師の人材確保・質向上に関する検討本部」はなんと、2月2日に、「『令和の日本型学校教育』を担う教師の人材確保・質向上プラン」を取りまとめて発表した。これは、「令和の日本型学校教育答申」を基礎にしながら、再度課題整理したものとも受け止めることができるが、基本的には答申ではこの線を基礎にしてまとめることと思われる。ほぼ並行して進んでいた、教育再生実行会議の議論は第12次提言が、6月3日に発表されることとなった。

 今回は、ここまでの更新講習に関するまとめ等を時系列に確認していきたい。

 令和2年6月5日 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた教員免許更新制に係る手続等の留意事項について(通知) 令和3年3月31日もしくは令和4年3月31日に更新期限を迎える教員は、令和5年の3月31日まで最大2年間、有効期間が延長され免許状の更新講習の受講期間が確保される
 令和2年6月8日 大臣講演会(内外情勢調査会全国懇談会) 文部科学大臣、講演にて更新講習含む教員免許制度の改革に触れた発言を私見として行う
 令和3年1月26日 「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申) 教員免許更新制の実質化について
○ 教員免許更新制は,教師として必要な資質・能力が保持されるよう,定期的に最新の 知識・技能を身に付けることで,教師が自信と誇りを持って教壇に立ち,社会の尊敬と信頼を得ることを目的としているが,これまで,採用権者が実施する研修との重複などの負担感が課題として指摘されてきた。
○ また,今般の新型コロナウイルス感染症の影響により,多くの現職教員が,免許状更新講習が数多く開講されている長期休業期間中も含め,子供たちの学びの保障に注力しなければならない状況が生じている。さらに,通常時とは異なる業務の発生も考慮した人的体制を迅速に構築することが求められている。
○ ふさわしい資質を備えた教師を,必要な人数教育現場に確保するということの重要性は,将来にわたって変化するものではない。今後も同様の事態が生じうるという認識に立ちつつ,教員免許更新制が現下の情勢において,子供たちの学びの保障に注力する教師や迅速な人的体制の確保に及ぼす影響の分析を行う必要がある。
○ あわせて,今回の事態も契機として,教師の勤務の長時間化や教師不足の深刻化といった近年指摘されている課題との関係も視野に入れつつ,例えば,教員免許更新制そのものの成果や,現在の研修の状況など,教員免許更新制や研修をめぐる制度に関してより包括的な検証を進めることにより,将来にわたり必要な教師数の確保とその資質・能力の確保が両立できるような在り方を総合的に検討していくことが必要である。
 令和3年2月2日 「『令和の日本型学校教育』を担う教師の人材確保・質向上プラン」「令和の日本型教育」を担う教師の人材確保・質向上に関する検討本部 必要な教師数の確保とその資質能力の確保が両立できるあり方を総合的に検討
◆教員免許更新制や研修をめぐる制度に関する包括的な検証(令和2年度に検証経過報告、令和3年度から必要な対策の検討)
教師の勤務の長時間化や教師不足の深刻化といった近年指摘される課題との関係も視野に入れつつ、教員免許更新制そのものの成果や、教師の資質能力の指標を定め、それに基づいて研修計画を策定する仕組みの定着状況など、教員免許更新制や研修を巡る制度に関して包括的な検証を進め、その結果に基づき、必要な見直しを行う。
 令和3年2月8日 教員養成部会「次期教員養成部会への申し送り事項」 教員免許更新制の課題について
①教員免許更新制の制度設計について
教員免許状の更新手続のミス(いわゆる「うっかり失効」)が、教育職員としての身分に加え、公務員としての身分を喪失する結果をもたらすことについては疑問がある。教員免許更新制そのものが複雑である。
②教師の負担について
教師の勤務時間が増加している中で、講習に費やす30 時間の相対的な負担がかつてより高まっている。講習の受講が多い土日や長期休業期間には、学校行事に加え補習や部活動指導が行われたり、研修が開催されている場合もあり、負担感がある。申込み手続や費用、居住地から離れた大学等での受講にも負担感がある。
③管理職等の負担について
教員免許更新制に関する手続や教師への講習受講の勧奨等が、学校の管理職や教育委員会事務局の多忙化を招いている。
④教師の確保への影響について
免許状の未更新を理由に臨時的任用教員等の確保ができなかった事例が既に多数存在していることに加え、退職教師を活用することが困難になりかねない状況が生じている。
⑤講習開設者側から見た課題等について
受講者からは、学校現場における実践が可能な内容を含む講習、双方向・少人数の講習が高い評価を得る傾向がある。一方で、講習開設者は、講習を担う教員の確保や採算の確保等に課題を感じている。
 令和3年3月12日 文部科学大臣諮問 教員免許更新制については,教師が多忙な中で,経済的・物理的な負担感が生じているとの声や,臨時的任用教員等の人材確保に影響を与えているという声があることなども踏まえ,前期の中央教育審議会において教員免許更新制や研修をめぐる制度に関して包括的な検証を進めていただいたところです。現場の教師の意見などを把握しつつ,今後,できるだけ早急に当該検証を完了し,必要な教師数の確保 とその資質能力の確保が両立できるような抜本的な見直しの方向について先行して結論を得ていただきたいと思います。
 令和3年5月24日 初等中等教育分科会教員養成部会(第123 回)・免許更新制小委員会(第2回)○教師が自らの学びを振り返り、将来の見通しをもって主体的に今後の学びを考えるために、管理職や任命権者が個々の教師の学びを把握し、人事配置やキャリア形成支援につなげるためにも、教師の研修受講履歴を記録・管理していくことがまずは重要ではないか。
○特に公立学校の教師については、教員育成指標等に基づく体系的な研修の仕組みが教育公務員特例法により整備されており、本指標や研修受講履歴等を手がかりとした教師と任命権者等との「対話」や研修の奨励が確実に行われるよう、制度的な措置を講じることが必要ではないか。こうした仕組みは、すべての公立学校の教師に継続的な教師の学びの契機と機会を確実に提供し、その資質能力の向上を担保するための中核的な仕組みとして機能するのではないか。
○教職員支援機構が公開している「校内研修シリーズ」などのオンライン講座は国公私立教員や地域の別を問わず、いつでもどこでもアクセスできるコンテンツであり、その拡充を進めるとともに、学校等における活用を促していくことが重要ではないか。
 令和3年6月3日 教育再生実行会議第12次提言 国は、教師の質の向上と数の確保が両立できるよう、過去の改革等の成果や課題も踏まえ、教員免許更新制や研修をめぐる制度に関して抜本的な改革を行う。
 令和3年7月5日 教員免許更新制小委員会(第3回) 議事
(1)令和3年度免許更新制高度化のための調査研究事業(現職教員アンケート)について
(2)教員研修履歴管理状況調査結果について
(3)今後の現職研修の充実方策について
(4)教員研修の履歴管理に関するヒアリング(京都府、大分県)
 令和3年7月10日 新聞記事リーク 教員免許更新制廃止へ 文科省、来年の法改正目指す
 令和3年8月4日 「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会(第3回)・教員免許更新制小委員会(第4回)合同会議 議事
(1)学校管理職を含む新しい時代の教職員集団の在り方の基本的考え方
(2)教師に求められる資質能力の再整理について
(3)教師の新たな学びの姿を踏まえた今後の現職研修の在り方について
 令和3年8月23日 教員免許更新制小委員会(第5回) 審議のまとめ(案)
更新制は発展的に解消する。

 さて、となるとどうなるのか。
 そうはいっても、おそらく現場の教員の皆さんや大学関係者に最も影響があるのは、以下の内容なのではないか。そして、これはいつにまで言及しているので、ある意味注目でもある。( )内を見ていただければ一目瞭然。政策としてはすでに…ingなのである。最近の政治家さんは、レガシー作りがお好きなようで。


『令和の日本型学校教育』を担う教師の人材確保・質向上プラン

令和の日本型学校教育の実現に向け、質の高い教員が教育を行うことの重要性に鑑みて教員養成・採用・研修の在り方について、基本的な在り方に遡って中長期的な実効性ある方策を文部科学省を挙げて検討していく。また、既存の枠組みの下当面の対応として以下の制度改正等に文部科学省として取り組み、当該取組が各教育委員会や大学等で着実に実施できるよう、制度の周知を図る。


<35人学級を担う教師の確保>
1.小学校の免許状を取りやすくする
◆免許の単位数を軽減する義務教育特例の教職課程(令和3年度に特例新設、令和4年度以降特例を活用した課程の開始)
◆中学校免許を持つ教員が小学校免許を取る場合の要件弾力化(法改正事項)
◆小学校教職課程の拡大(令和3年度に検討及び要件緩和、令和5年度以降課程の設置)
2.教職の魅力を上げ、教師を目指す人を増やす
◆広報の充実(令和2年度以降検討・実施)
◆働き方改革の推進、待遇の検討討(令和4年の勤務実態調査等を踏まえ検討)
3.教師として働き続けてもらえる環境をつくる
◆免許の有効期限が切れた者の復職の促進進(平成30年度通知、令和2年度以降再周知)
◆教員免許更新制の在り方の見直し(後述)
<社会人等多様な人材の活用>学校現場に参画する多様なルートを確保する
◆小学校教員資格認定試験の見直し(令和2年度から実施・検討)
◆民間企業等での勤務経験を活かした免許状(特別免許状)(令和2年度に指針を改訂)
◆社会人が働きながら単位を修得して免許状を修得(教職特別課程の活用)(法改正事項)
◆民間企業に所属しながら、学校現場での勤務を経験する(学校雇用シェアリンクを創設)(令和2年度より実施
◆教員免許保有者が学び直して、学校現場で働く(令和2年度より実施)

<教職課程の高度化と研修の充実>
1.新しい時代を見据え、教員養成の在り方を大学の自由な発想で検討・構築し、他の大学を先導する。
◆大学が教職課程のカリキュラムを弾力化できる特例の創設による新しい時代の教員養成プログラムの開発(令和3年度に検討及び制度創設、令和4年度から制度開始)
◆複数の大学が、各大学の強みと特色を持ち寄って教職課程を構築できる仕組みの創設(令和2年度に制度改正、令和3年度以降に制度を活用した課程の開始)
2.一人一台端末が導入される教育環境の変化を踏まえ、教師のICT活用指導力を一層向上させる。
◆養成段階において、ICTに特化した科目を新設(令和3年度に科目新設、令和4年度から課程の開始)
3.教職課程を置く大学自身が定期的に自らの課程を見直し、時代やニーズに合った課程を構築する。 
◆大学が自らの課程を見直す仕組みの整備とその全学的な体制の整備の義務化(令和2年度に制度改正、令和4年度から実施)
4.現職教員が学校現場を取り巻く変化に対応して学び続ける環境を充実する。 
◆(独)教職員支援機構における研修内容の充実と、オンライン研修の拡充(令和3年度より充実拡充)

<教員免許更新制の在り方の見直し>
必要な教師数の確保とその資質能力の確保が両立できるあり方を総合的に検討
◆教員免許更新制や研修をめぐる制度に関する包括的な検証(令和2年度に検証経過報告、令和3年度から必要な対策の検討)

「令和の日本型学校教育」を担う教師の人材確保・質向上プラン(2021/2/2)
(『令和の日本型学校教育』を担う教師の人材確保・質向上に関する検討本部)

 となると更新講習はどうなるのか。
 前回の審議のまとめを受けてのコラム(8/25)でも触れたように、いよいよ発展的解消に向かって更新制はなくなる方向なのだ。しかし、なにしろ今回の答申で政策的には、「教師の資質能力の確保」「教師や管理職等の負担の軽減」「教師の確保を妨げないこと」をクリアする後ろ盾にならねばならないのだ。特に、三番目の教師の確保はできないでは済まされない課題なのだ。

 再々の繰り返しになるが、教師とは以下のような職業だということを大いにPRできるように環境を整え、実現したらどうか。
 「教員の日常は大変かもしれないけど、まとまった休みがある。」
 「それなりの給与が保証される。」
 「なにしろ、やりがいは十分すぎるほどある。毎日が学びだ!」
 こんな生き方をしたいという方は、壮年者も含めてそれなりの数がいそうな気がするのだが、皆さんいかがお考えになるだろうか。再度宣言するが、私も自分の人生の最後のステージで今一度現場で活動してみたいと思っている口である。

 上記に加えて、新卒者向けには、学生支援機構からの奨学金の返還にも配慮することを示してほしい。
 現在、学生支援機構の仕組みでは、返還免除になるには、大学院(修士課程・専門職学位課程・博士(後期)課程)修了の優秀な成果を収めた人だけだ。ぜひ、かつての様に教員として未来創造に責任をもって携わる方にも免除を適用していくことが必要なのではないか。

 今回の更新講習を巡る議論を見ていると、昨年6月の様子を見るに、教員免許制度のことも怪しげな理解だった大臣であるが、どっこいとっくにゴールに関してはイメージしていたことになる。それを支持するか否かは皆さん次第だ。
 個人的には、もう少し冷静に現状を見つめ、持ちうる情報をもとにしっかり考えることが必要ではないかと考える。確かに、現在は、将来の予測が困難な時代だといわれて久しい。今回の答申案にも、判で押したように「予測困難な時代」という言葉が冒頭から登場する。社会はその時生きている人を中心に構成されるのであるから、その時期に応じて変わっていくことは自明のことだ。特に、人と人を繋ぐ手段としてインターネットが登場・普及したことは、産業革命に匹敵するインパクトを社会生活と社会様式に与えた。これも事実であろう。
 しかし、未来予測ができた時代などあったのだろうか。過去と現在と未来は滔々と繰り返しながら連なっていく。その中で、まさに動的平衡を保つ存在として我々は生活している。少しずつの変化が続いているのは現実だ。そして、その速度は早回しになっているようにも見える。確かに、あっという間にスマフォは普及している。気が付けばみな手元にコンピュータを携帯する社会となっている。だが、この今に続く原型は1960年代からあり、更に二進法を原型と考えると、この考え方は、中国など古代からあり、数学的に確立したのは400年前だといわれる。
 そして、人と人との距離が、地球上どこにいても近くなったと感じることができるインターネット社会を迎えた我々がいる。それなのに、人と人との距離を空けなければいけない状態になった。これはなんて皮肉なことなのであろうか。そして、コロナ禍は我々に物事の本質を見つめなおす機会を与え続けている。
 学校とは何か。勉強とは何か。行事とは何か。働くとは何か。学ぶとは何か。インターネットとは何か。遠隔通信とは何か。言葉とは何か。満員列車とは何か。エッセンシャルワークとは何か。人とは何か。我々の取りうるすべは何か。この機に、あらゆるものの本質的な意義や疑問を、自己と世に問うた方には何か見えてきているのではないだろうか。
 だからこそ、「過去に感謝して、未来に責任を持つ」という言葉がますます重要になる気がしている。

(スケジュール予測)
更新講習に関する答申 最速 2021年9月
省内調整・法案準備
法案提出 2022年1月(最速5月改正法成立)
周知移行期間 最低1年
2022年度受講対象者は現制度適用
新制度開始 2023年度
2023年度は新制度への移行期間で旧制度との併用


(最後に)
 次年度の文部科学省予算をめぐる報道見出しから何点か紹介する。すべてインターネット経由である。「次世代半導体研究を強化 概算9億円要求へ、拠点化図る」(共同通信社)、「自治体にGIGA支援センター設置へ 文科省概算要求」(朝日新聞)、「来年度予算 教科担任制4年かけ 文科省、教員2000人要求」「文科省、ワクチン研究開発拠点を整備へ 概算要求に65億円計上」(毎日新聞)、「コロナ禍で学校支援員増強 11.7%増、デジタル化加速も 文科省概算要求」(時事通信)、教育に熱心だった記憶がある読売新聞の今回の概算予算請求にまつわる記事がなかったのは時代の流れかもしれない。
 しかし、今取り上げるものは何なのであろうか。記事の見出しの雰囲気では、教育関連予算が増えるかのようであるが、実際には、教育関連予算で、4兆216億円⇒4兆3859億円と増加。スポーツ関連予算は、354億円⇒430億円と増加。文化芸術関係は、1,075億円⇒1,311億円とやや増加。科学技術関係は、9,768億円⇒1兆1,774億円と大幅増加。ちなみに、義務教育費国庫負担金は、1兆5,164億円⇒1兆5,147億円と微減である。小学校高学年の教科担任制、小学校の35人学級の実現、学校の働き方改革に係る対応などあるが、実際には昨年度予算より減なのである。いかにこどもが減っているかとみるか、ベテランと若手の入れ替わりの人件費とみるか、人口動態はほぼあたるので、このあたり報道機関はどう考えているのか聞いてみたいところだ。OECD加盟国の中では、教育費支出が少ないといわれている日本。未来を創っていくために必要なのは教育だと思うのだが、教育の扱いは報道機関でもそうは重要視していない気がする。そらくこの辺りが課題だと考えるが、新聞報道に始まった「どうなる教員免許更新制」コラムをここで一段落とする。最後まで読んでいただきありがとうございました。

(著者紹介)
松本 幸広(まつもと ゆきひろ)
 埼玉県秩父郡長瀞町出身のチチビアン。学生時代宮澤保夫が創設した「ツルセミ」に参加。大学卒業後宮澤学園(現星槎学園)において発達に課題のあるこども達を含めた環境でインクルーシブな教育実践を行う。その後、山口薫とともに星槎大学の創設に従事し、いわゆるグレーゾーンのこども達の指導にあたる人たちの養成を行う。星槎大学においては、各種教員免許の設置をおこない、星槎大学大学院の開設も行う。「日本の先生を応援する」というコンセプトで制度開始時から更新講習に取り組んである。新たな取り組みである、「1day講習」の講師も務める。

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