前回教員の学びについて触れた。そして、そこには大学院がどう絡むか、すでに専門職であるはずの教員の学びを、教職大学院という専門職大学院で担わなければならないというのも、学部での教員養成に課題があるからかもしれない。それゆえに、現在教員養成のフラッグシップ大学事業が進んでいるのであろうが、今あるものの改善はできないであろうか。専門職の学位取得や専修免許状取得が目標としてはわかりやすいかもしれないが、1年間の大学院休業制度は、現状ではうまく機能しているとは言えない。なにしろ活用しているのは平成31年4月時点で全国172名しかいないのである。教職大学院ではないが、教育系の専門職大学院である星槎大学大学院教育実践研究科もぜひ活用してほしいところではあるが、うまくいかないのはその制度にも原因がある気がする。
まず、中心となるべき教職大学院は通信教育ができない。平成19年制度創設の際に示された、「専門職大学院設置基準及び学位規則の一部を改正する省令の公布等について(通知)」で、「教職大学院における授業は、講義のほか、グループ討議、実技指導・模擬授業、ワークショップ、フィールドワークなど、従来とは異なる新しい教育方法を中心に展開される必要があること。このため、専門職大学院設置基準第8条及び第9条により多様なメディアを高度に利用する方法による授業を実施する場合は、教育課程の編成について、この趣旨を踏まえる必要があること。特に、全ての授業科目の全ての授業が通信により行われる課程は想定されないこと。」とされていることをもって、通信教育課程はできないこととされている。教職大学院に限らず、専門職大学院は専門職大学院設置基準第八条「専門職大学院においては、その目的を達成し得る実践的な教育を行うよう専攻分野に応じ事例研究、現地調査又は双方向若しくは多方向に行われる討論若しくは質疑応答その他の適切な方法により授業を行うなど適切に配慮しなければならない。」となっているのであるから、当然といえば当然かもしれないが、現在の技術では遠隔授業など多くの授業が通信の方法で可能でもある。それゆえに、通信教育課程の専門職大学院もある。ちなみに、通信教育における授業の方法は以下の4つがある。①テキスト教材による授業、②放送授業、③面接授業、④高度にメディアを利用した授業 となるが、いわゆる通学課程でも③④は実施されている。考えてみれば、実務系の専門職大学院でも実習だけではないので、①と②があってもおかしくはない。まだ、通学と通信の二元論でやっていくのであろうか。学び手の立場に、もっとよりそった環境を整えられないものであろうか。
いずれにせよ、全く新しいことをやろうとしているわけではなく、現状を改革していくことなのであるから、現状の見直しは必須である。「教師の資質能力の確保」「教師や管理職等の負担の軽減」「教師の確保を妨げないこと」の本来目的は達成するために、知恵を出すのがまさに今なのである。
「教師の資質能力の確保」については、どのような研修であるかが議論の核になる。
「教師や管理職等の負担の軽減」については、とりまとめるシステムが議論の核になる。
「教師の確保を妨げないこと」については、教師の魅力を伝えると共に、休眠中・失効中の免許所持者への対応が、議論の核になるはずだ。
どのような議論が、展開されていくか今後も注目していきたい。
毎度毎度の繰り返しになるが、教師の確保のために、教師とは以下のような職業だということを大いにPRできるように環境を整え、実現したらどうか。
「教員の日常は大変かもしれないけど、まとまった休みがある。」
「それなりの給与が保証される。」
「なにしろ、やりがいは十分すぎるほどある。毎日が学びだ!」
こんな生き方をしたいという方は、壮年者も含めてそれなりの数がいそうな気がするのだが、皆さんいかがお考えになるだろうか。今回もまたまた宣言するが、私も自分の人生の最後のステージで今一度現場で活動してみたいと思っている口である。
上記に加えて、新卒者向けには、学生支援機構からの奨学金の返還にも配慮することを示してほしい。
現在、学生支援機構の仕組みでは、返還免除になるには、大学院(修士課程・専門職学位課程・博士(後期)課程)修了の優秀な成果を収めた人だけだ。ぜひ、かつての様に教員として未来創造に責任をもって携わる方にも免除を適用していくことが必要なのではないか。