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2022/04/06

どうなる教員免許更新制 リターンズ9

Tweet ThisSend to Facebook | by 星槎大学 事務局
2022年4月6日

 3月30日衆議院文部科学委員会で審議が始まった。この日は初回でもあり大臣の改正法の概要説明が行われた。時間は5分程度で24日の趣旨説明とほぼ同じ内容であった。実質審議は4月1日から開始され、ここでは参考人質問が行われた。
 参考人は、審議会の主査でもあった兵庫教育大学の加治佐学長、日本教職員組合の瀧本中央執行委員長、慶應義塾大学教職課程センターの佐久間教授が招かれた。はじめに三氏から意見を聞き、その後質疑となったが、基本的には原案の更新制廃止には賛成、特例法に関しては反対という意見もあった。委員と参考人の間では、これまでの更新制度の背景も含めた議論もあり、現在の日本における教員の置かれた状況も語られた。そのやりとりからは、私が現場にいたときと比べ公立学校の現場は大変になっている印象を受けた。これには地域差があるのかまではわからないが、世界と比較して日本の先生を巡る環境はなかなか困難であることは、TALIS(OECD国際教員指導環境調査)の結果を見ると明らかだ。教員の仕事時間は参加国中で最も長く、人材不足感も大きい。
 次回は4月6日だが、この流れからすると大きな混乱もなく法案成立になると予測される。

 さて、日本では教員が専門職者かどうか、意見が分かれる場合がある。国際的には、ユネスコの「教員の地位に関する勧告」“Recommendation concerning the Status of Teachers”(1966年10月5日 リンクは文部科学省ホームページ)には、教師は専門職であると明記されているのであるが、労働基準法第14条における「専門的知識等を有する労働者」には教員が入っていないゆえにおこる議論である場合が多い。加えて一般的には、専門職者であるならば、「職能団体を有すること」と「倫理綱領がある」といわれるが、この点を指摘する方もいる。昭和27・36年の倫理綱領も今ではあまり触れられることもない。しかし、日教組委員長が参考人として呼ばれているということは職能団体として認められているのかとも思う。であれば、本来的には専門職者が自律的に研修を行うのがいい気がする。いままで教職員組合とは多くの地域で連携してきた我々としては、組合が自律的に研修を行うのであれば大いに協力できると思うのであるが、そのような議論が出てこないのは残念である。

 前回教員の学びについて触れた。そして、そこには大学院がどう絡むか、すでに専門職であるはずの教員の学びを、教職大学院という専門職大学院で担わなければならないというのも、学部での教員養成に課題があるからかもしれない。それゆえに、現在教員養成のフラッグシップ大学事業が進んでいるのであろうが、今あるものの改善はできないであろうか。専門職の学位取得や専修免許状取得が目標としてはわかりやすいかもしれないが、1年間の大学院休業制度は、現状ではうまく機能しているとは言えない。なにしろ活用しているのは平成31年4月時点で全国172名しかいないのである。教職大学院ではないが、教育系の専門職大学院である星槎大学大学院教育実践研究科もぜひ活用してほしいところではあるが、うまくいかないのはその制度にも原因がある気がする。
 まず、中心となるべき教職大学院は通信教育ができない。平成19年制度創設の際に示された、「専門職大学院設置基準及び学位規則の一部を改正する省令の公布等について(通知)」で、「教職大学院における授業は、講義のほか、グループ討議、実技指導・模擬授業、ワークショップ、フィールドワークなど、従来とは異なる新しい教育方法を中心に展開される必要があること。このため、専門職大学院設置基準第8条及び第9条により多様なメディアを高度に利用する方法による授業を実施する場合は、教育課程の編成について、この趣旨を踏まえる必要があること。特に、全ての授業科目の全ての授業が通信により行われる課程は想定されないこと。」とされていることをもって、通信教育課程はできないこととされている。教職大学院に限らず、専門職大学院は専門職大学院設置基準第八条「専門職大学院においては、その目的を達成し得る実践的な教育を行うよう専攻分野に応じ事例研究、現地調査又は双方向若しくは多方向に行われる討論若しくは質疑応答その他の適切な方法により授業を行うなど適切に配慮しなければならない。」となっているのであるから、当然といえば当然かもしれないが、現在の技術では遠隔授業など多くの授業が通信の方法で可能でもある。それゆえに、通信教育課程の専門職大学院もある。ちなみに、通信教育における授業の方法は以下の4つがある。①テキスト教材による授業、②放送授業、③面接授業、④高度にメディアを利用した授業 となるが、いわゆる通学課程でも③④は実施されている。考えてみれば、実務系の専門職大学院でも実習だけではないので、①と②があってもおかしくはない。まだ、通学と通信の二元論でやっていくのであろうか。学び手の立場に、もっとよりそった環境を整えられないものであろうか。

 いずれにせよ、全く新しいことをやろうとしているわけではなく、現状を改革していくことなのであるから、現状の見直しは必須である。「教師の資質能力の確保」「教師や管理職等の負担の軽減」「教師の確保を妨げないこと」の本来目的は達成するために、知恵を出すのがまさに今なのである。
 「教師の資質能力の確保」については、どのような研修であるかが議論の核になる。
 「教師や管理職等の負担の軽減」については、とりまとめるシステムが議論の核になる。
 「教師の確保を妨げないこと」については、教師の魅力を伝えると共に、休眠中・失効中の免許所持者への対応が、議論の核になるはずだ。
 どのような議論が、展開されていくか今後も注目していきたい。

 毎度毎度の繰り返しになるが、教師の確保のために、教師とは以下のような職業だということを大いにPRできるように環境を整え、実現したらどうか。
 「教員の日常は大変かもしれないけど、まとまった休みがある。」
 「それなりの給与が保証される。」
 「なにしろ、やりがいは十分すぎるほどある。毎日が学びだ!」
 こんな生き方をしたいという方は、壮年者も含めてそれなりの数がいそうな気がするのだが、皆さんいかがお考えになるだろうか。今回もまたまた宣言するが、私も自分の人生の最後のステージで今一度現場で活動してみたいと思っている口である。
 上記に加えて、新卒者向けには、学生支援機構からの奨学金の返還にも配慮することを示してほしい。
 現在、学生支援機構の仕組みでは、返還免除になるには、大学院(修士課程・専門職学位課程・博士(後期)課程)修了の優秀な成果を収めた人だけだ。ぜひ、かつての様に教員として未来創造に責任をもって携わる方にも免除を適用していくことが必要なのではないか。

(スケジュール予測)
法案提出 2022年2月25日(最速6月改正法成立 7月施行)
現在、衆議院文部科学委員会にて審議中
2022年度受講対象者は、法令施行しだい制度適用見込み
研修新制度開始 2023年度

(著者紹介)
松本 幸広(まつもと ゆきひろ)
 埼玉県秩父郡長瀞町出身のチチビアン。学生時代宮澤保夫が創設した「ツルセミ」に参加。大学卒業後宮澤学園(現星槎学園)において発達に課題のあるこども達を含めた環境でインクルーシブな教育実践を行う。その後、山口薫とともに星槎大学の創設に従事し、いわゆるグレーゾーンのこども達の指導にあたる人たちの養成を行う。星槎大学においては、各種教員免許課程の設置をおこない、星槎大学大学院の開設も行う。「日本の先生を応援する」というコンセプトで制度開始時から更新講習に取り組んでいる。新たな取り組みである、「1day講習」の講師も務める。

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