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2022/04/28

どうなる教員免許更新制 リターンズ11

Tweet ThisSend to Facebook | by 星槎大学 事務局
2022年4月28日

 4月28日、参議院文教科学委員会で教育職員免許法(以下「免許法」)と教育公務員特例法(以下「教特法」)の改正法案審議が開始された。衆議院に続いてこちらでも7月1日改正法施行にむけて進むことは確実だと思われる。

 さて、改正法審議が動いている中で、教職員支援機構から「「新たな教師の学びのための検索システム」の開設について(通知)4月25日付」がEメールにて届いた。このシステムは、審議のまとめにもあった「一元的な情報提供サイト」に位置するものだ。このサイトではもともと更新講習を検索することを目的としていたのだが(今でも法改正前なので更新講習も検索できる)、現時点では更新講習以外の講習も検索できるようになっている。更新講習以外は、文部科学省、文化庁、教職員支援機構、東京学芸大学、佐賀大学、岡山県教育研修センター、岡山県教育センター、大分県教育委員会、特別支援教育総合研究所の主催する講習が登録されている。最多なのは今までの研修シリーズを引き継いだ教職員支援機構がオンライン中心の研修を189講座提供している。これらの講習は基本現時点では無料なのであるが、放送大学は更新講習ではないが有料で講習を提供、変わったところでは公益財団法人ニホンボールルームダンス連盟が開設者として受講料無料で講習を提供している。放送大学は、3時間のオンデマンド講習を受講料3,000円で3講座、8,000円で1講座出している。この流れで、いわゆる民間の研修も選択肢になっていくことが想定される。ちなみに我々に届いたこの通知は、このサイトに講座をぜひ登録してほしいという案内である。現時点では623講座(うち更新講習が115件)が登録されている。それぞれの講座は修了証明書が発行されるので、改正法で研修等に関するいわゆる管理職面談をやる時にはこれが有効になるのであろう。今後かなりの講座が登録されていくのであろうが、我々は1day講習を引き続き開講していくことを基本にしている。現状に加えるのは、1dayのオンデマンド版講習を制作していくことになる。いつでも学べるのは利便性としてはよいのであろうが、ライブにはライブのよさがあるのでお好みで受講してもらえればと考えている。

 もうひとつこの間で気になっているのは、前回も触れたが休眠免許や有効期限が切れた免許のことだ。どうも、今回の件を議論している方々からは学校現場の香りがしない。確かに、衆議院の委員長はじめ質問に立つ委員の中には教員だったと名乗っている方はいるのだが、どうも近代にやられた感じがするのだ。それゆえに、休眠免許などの件がふわふわした感じになっているのだ。理屈はそうだろうが、いいのかなという感じだ。ハイデガー言うところの「世人」なのか。わかりやすくすることは大切なことではあるが、わかりやすくすればいいというものでもあるまい。それとも、休眠免許の有効化に講習を利用することなく、それぞれの判断で学びの現場に臨んでもらおうというのは逆に個人の判断を測るということなのであろうか。平成を経て日本の教育の概念は大きく変わってきている。当たり前の帰結なのであるが、学びは学習者が主体であるということがはっきりした。「なんで勉強するの?」という質問に大人が本質的回答をしなければならなくなったのだ。いい学校へ、いい会社へなどという回答はみんなをがっかりさせるだけである。ということで、休眠免許の方は免許の有効化のために、学びを通じてあなた自身の生き方を見直す必要があるわけである。

 おそらく改正法施行の結果、以下の様になる。
1.休眠免許  自動的に有効化される
2.期限切れ免許  なるべく負担少なく再度授与権者(都道府県教育委員会)再発行

 心ある社会人であれば、毎月の給与の1割程度は自己研鑽に使っているだろうから、そんな社会人のたくましさを発揮してほしいものだ。そして、4月28日から始まる参議院文教科学委員会の議論ではこのあたりの議論が展開されることを期待している。
 前々回今回の法改正の目的の一つである「教師の確保を妨げないこと」については、教師の魅力を伝えると共に、休眠中・期限切れ失効中の免許所持者への対応が、議論の核になるはずと書いたのであるが、議論にはほぼほぼならなかった。末松大臣はじめ、藤原局長がもっと本質的な議論の渦中に入り、質問者とともに解の無い答えを導いていくことを願っている。衆議院の委員会の時のような対話になっているような、なっていないような答弁になるのはさすがにもう勘弁である。民主主義の中で形式的なアリバイ作りが大切なことは制度的にはわかっているが、少なくとも、学校の教材として提示できるような国会での議論を期待している。

 なにしろ、こども達の前に立ち、未来を創っていくために人の営みを伝えていくことは、持続性から言っても間違いなく必要なことだ。過去に感謝して、未来に責任を持つためにも、学習を提供し学習者の学修を支える教育というものは最重要課題だ。
 毎度毎度の繰り返しになるが、教師の確保のために、教師とは以下のような職業だということを大いにPRできるように環境を整え、実現したらどうか。
 「教員の日常は大変かもしれないけど、まとまった休みがある。(ぜひ実現してほしい)」
 「それなりの給与が保証される。」
 「なにしろ、やりがいは十分すぎるほどある。毎日が学びだ!」
 こんな生き方をしたいという方は、壮年者も含めてそれなりの数がいそうな気がするのだが、皆さんいかがお考えになるだろうか。今回もまたまた宣言するが、私も自分の人生の最後のステージで今一度現場で活動してみたいと思っている口である。
 上記に加えて、新卒者向けには、学生支援機構からの奨学金の返還にも配慮することを示してほしい。
 現在、学生支援機構の仕組みでは、返還免除になるには、大学院(修士課程・専門職学位課程・博士(後期)課程)修了の優秀な成果を収めた人だけだ。ぜひ、かつての様に教員として未来創造に責任をもって携わる方にも免除を適用していくことが必要なのではないか。

 今回参議院の審議が始まり教職員支援機構の動きがあったので取り上げることができなかったが、次回こそは、参議院での審議も見ながら、マジックワードの様になっている「教員の働き方改革」と「多様性」について考えていきたい。

(スケジュール予測)
法案提出 2022年2月25日(最速6月改正法成立 7月施行)
現在、衆議院文部科学委員会にて審議完了 参議院文教科学委員会審議開始
2022年度受講対象者は、法令施行しだい制度適用見込み
研修新制度開始 2023年度

(著者紹介)
松本 幸広(まつもと ゆきひろ)
 埼玉県秩父郡長瀞町出身のチチビアン。学生時代宮澤保夫が創設した「ツルセミ」に参加。大学卒業後宮澤学園(現星槎学園)において発達に課題のあるこども達を含めた環境でインクルーシブな教育実践を行う。その後、山口薫とともに星槎大学の創設に従事し、いわゆるグレーゾーンのこども達の指導にあたる人たちの養成を行う。星槎大学においては、各種教員免許課程の設置をおこない、星槎大学大学院の開設も行う。「日本の先生を応援する」というコンセプトで制度開始時から更新講習に取り組んでいる。新たな取り組みである、「1day講習」の講師も務める。

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