来年1月からの通常国会で法改正ができたら、すぐに施行するとのことだ。来年度、法律が施行された以降に免許の有効期限を迎える方は、免許状更新講習の受講や免許の更新の手続の必要がなくなるとのこと。今年度は、既に2023年3月更新期限の方も受講している。1day講習などは、約半数が該当する。コロナ禍で期限延長申請した方も含まれるわけだ。
なんでそんな慌ててやるかというと、「文科省は当初22年度末で廃止する方針だったが、制度移行までの間に誤って受講しなかった教員が免許を失効する恐れがあり、時期を早める考えだ」と共同通信は伝えている。つまりは、「更新講習はもうない」と早合点して、受講漏れで失効するのが心配だからということか。
この手のことは、慌てて言わないほうがいい。まだ決まっていない内容をもとに色々動きが出ると余計な混乱を生むからだ。国会でもみんなが賛成するわけでもないのはわかっているだろうに。
ちなみに、「各大学におかれては、こうした状況を踏まえ、来年度の免許状更新講習の開講について、適切にご判断いただきたいと考えております」。この「適切」というのが実にいやらしい。だれにとって「適切」なのか。だから理屈だけでこねくり回す人種は気が合わないんだ。基本この種族はだれも責任を取らない傾向が強い。
つい文句と愚痴になるが、今回の提審議のまとめ案に対する、アリバイ作りのパブリックコメントはどうも腹立たしい。「※1つの意見を分けて記載している場合や同内容の意見を集約している場合があります。」とエクスキューズしているが、今回の意見はメールが935件、郵送・FAXが191件の合計1,126件。記載されているのは、68件。すさまじい集約だ。以下のページの結果概要から確認下さい。
この、「第4回特別部会からの修正履歴付き版」の文言修正中心の修正は笑ってしまう。委員は、パブコメ書いた人になんて言うのだろう。パブコメの中で目に付いたのは、教員と思われる方々からの今後の管理の在り方に対する不安だ。ここは私も全く同じ感想を持っている。これは前回のコラムに書いたとおりだ。
研修受講履歴管理システムが導入されることが計画されている。せっかく、都道府県ごとに収まっていた教員が全国規模で管理される。誤解しないでほしいのだが、私は管理が嫌なのではない。管理したことで、やった気になることが多いのが気に食わないのである。本当に大切なことはそうではないだろうと思うからだ。人が考えることなんてたいしたものではないのだと自身が考えているからなのである。多様性という言葉を使った瞬間に、多様性がわかった気になってしまうのと同じで、管理システムという言葉を使った瞬間に、何のための管理かわからなくなり、管理することが目的化してしまう。
今後、AIが跋扈する世の中で、人はどう生きていくのか。そこのところを、自分の頭で考える場であるのが、学校の役割のはずだと信じている。人のことを知り、未来を創っていく場となるところ。「がっこ」は人が集まる場なのである。
議論を追っていると、だんだんコンピュータの真似をしているような考え方に近づいている感じがする。それは違うと、肌感覚で感じる人はいないのであろうか。まあ、近代の教育はここを目指してきたのかもしれない。それゆえ、このような議論とこのような結論にいたるのは成功だったのかもしれない。しかし、チチビアンにはどうも気に入らない、体温や匂いを感じない議論が進んでいるように思えるからだ。
これが、ゼロトレランスを生むのだろうな(とつぶやきたくなる)。自然なまま、つまり多様性を受け入れることに必要なのは寛容さなのだと語ると、「いい加減だ」と思われる。「いやいや、いい加減がいいでしょ」と言っている自分も、身近な人からは「理屈っぽい」と揶揄される。そしたらそんな私に言われている審議会の委員の方々は何なのだろう。そうは言いながら、個人的に知っている人もいる。「そうか、では官僚のせいか」と思わなくもないが、知り合いの官僚でいいやつもいる。自然だ。自分自身が自分に言い聞かせてきたことは「まじめすぎるな」だ。何事も過ぎたるはで、バランスが大事ということだ。
更新講習を受講している方は、この研修システムでは研修完了のようになるらしい。それゆえ、何も無駄なことにはならないので安心するように、文科省の資料に書いてあった。どちらかというと、個人的には、うちの1day講習のようなものを利用するのがいい気がする。
今回も、毎度毎度の繰り返しになるが、教師とは以下のような職業だということを大いにPRできるように環境を整え、実現したらどうか。
「教員の日常は大変かもしれないけど、まとまった休みがある。」
「それなりの給与が保証される。」
「なにしろ、やりがいは十分すぎるほどある。毎日が学びだ!」
こんな生き方をしたいという方は、壮年者も含めてそれなりの数がいそうな気がするのだが、皆さんいかがお考えになるだろうか。今回も宣言するが、私も自分の人生の最後のステージで今一度現場で活動してみたいと思っている口である。
上記に加えて、新卒者向けには、学生支援機構からの奨学金の返還にも配慮することを示してほしい。
現在、学生支援機構の仕組みでは、返還免除になるには、大学院(修士課程・専門職学位課程・博士(後期)課程)修了の優秀な成果を収めた人だけだ。ぜひ、かつての様に教員として未来創造に責任をもって携わる方にも免除を適用していくことが必要なのではないか。
(スケジュール予測)
免許状更新講習規則改正 2021年11月(ほぼ確定。領域問わない30時間)
教育職員免許法改正 省内調整・法案準備
法案提出 2022年1月(最速5月改正法成立)
2022年度受講対象者は、法令施行しだい制度適用見込み
新制度開始 2023年度
(著者紹介) 松本 幸広(まつもと ゆきひろ) 埼玉県秩父郡長瀞町出身のチチビアン。学生時代宮澤保夫が創設した「ツルセミ」に参加。大学卒業後宮澤学園(現星槎学園)において発達に課題のあるこども達を含めた環境でインクルーシブな教育実践を行う。その後、山口薫とともに星槎大学の創設に従事し、いわゆるグレーゾーンのこども達の指導にあたる人たちの養成を行う。星槎大学においては、各種教員免許課程の設置をおこない、星槎大学大学院の開設も行う。「日本の先生を応援する」というコンセプトで制度開始時から更新講習に取り組んでいる。新たな取り組みである、「 1day講習」の講師も務める。 |