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2021/08/25

どうなる教員免許更新制4 第5回小委員会で審議まとめ/そして1day講習

Tweet ThisSend to Facebook | by 星槎大学 事務局

2021年8月25日

 824日の新聞紙上に「教員免許更新講習廃止へ」という言葉が躍った。これは、823日に第5回更新講習小委員会が開催され、審議のまとめが検討されたことを受けてのものだ。それに伴い、大臣も会見し、「次の通常国会に必要な法改正を提出するよう指示した。これは発展的解消で、今のような更新制度を変え、不断の研修をして頂くことになる。通常国会が来年となると、再来年がスタートの時期かなと思う」と述べた。また、「新しい制度に移行するまでの期間はやむを得ない。講習を受けることは無駄ではなく、講習履歴を所属する都道府県教育委員会や市町村教委などで反映する仕組みをつくる。今の制度が続く間はしっかり受けていただきたい」とも述べ、2022年度末までに更新が必要な方にも注意を促した。

 今回は、822日に実施した、今年度第一回目の星槎大学1day講習の様子と、この審議のまとめの検討の様子を受けての私の予想をお伝えする。

 

 さて、822日には、今年度第一回目の1day講習を開講した。

 受講した方々88名の、平均年齢は42.5歳、気になる55歳以上の方は9人で10.2%だった。この講習を機に教職に就きたいという方は8名で、両者合わせて1719.3%となる。ちなみに、この講習を機に来年度から教職に就く予定の方は所属をみな教育委員会と記載され申し込まれている。修了確認期限は、20223月と20233月の方がほぼ半々だった。

 この講習の特徴は、いわゆる通信教育を基礎にしつつ、Webを使った遠隔授業を取り入れていることだ。私の所属する星槎(せいさ)大学では、制度開設当初から対面講習だけでなく、通信教育による講習も実施していた。10年前は、通信教育より圧倒的に対面講座が人気だった。お忙しい中、通信講座の方が時間を有効に使えるので人気になるかと思っていたが全く逆だった。

 やはり、通信教育で孤独に学んで試験だけ受けに行くというイメージは、不安が先行してしまったからの不人気ではなかったかと推測する。しかしながら制度が進展してここ数年はコロナ前であっても、受講生の5人に一人は通信講習を受講するようになっていた。その状況でのコロナ禍である。

昨年は、基本的に対面講習をすべて通信教育講座に振り替えて実施した。かなりの数の受講生の方へ個別連絡して、意向を確認の上での対応であった。その中で生まれたのが、1day講習である。

 1day講習は、基本通信教育である。必要な学習はほぼテキストで実施する。そのうえで、オンラインの30時間の範囲をカバーする遠隔講習を1日受講し、必修領域、選択必修領域、選択領域の修了試験を受験するのである。この講習の良さは、受講者アンケートなどから見るに、①自宅で受講できること ②他者に制限され拘束される日程は1日で済むこと ③講座内で受講生の事前アンケートの内容に応えてくれること ④全国に広がったみんなで受講できる安心感があること ⑤GIGAスクールを実際に体験できた気がする などがあげられていた。もちろん、西永教授と作成したテキストも、講習内容もよい評価をいただいた。

 今年度は、コロナのこともあり、この講習をより多く提供していきたいと考えている。なにしろ、現在の新型コロナ感染症の状況ではとても対面講習を実施できない。加えて、昨年度からコロナによる延長申請の方や、前回のコラムで書いたが再任用の方、これから非常勤講師として働く予定の旧免許状所持の方、など受講しなければならない方がたくさんいるはずだ。ある意味幸いにも、現時点では報道のせいで申し込みを控えている方も多いようだ。それゆえに、申込日程も現時点では選択できる状況だと運営スタッフから聞いている。各日程、受講人数の上限を設けているのでぜひ早めの予約がおすすめだ。 2022年度末が期限の方は受講が必要なのでお忘れなく。

 https://teachers.seisa.ac.jp/join/oneday/

 

 今回の、審議のまとめの主だったところは以下の文章に集約される。一文である。

 「よって、本部会としては、「新たな教師の学びの姿」を実現するための方策を講ずることにより、教員免許更新制が制度的に担保してきたものは総じて代替できる状況が生じること、教員免許更新制は、「新たな教師の学びの姿」を実現する上で、阻害要因となると考えざるを得ないこと、教員免許更新制の課題の解決を直ちに図ることは困難であることを踏まえ、必要な教師数の確保とその資質能力の確保を将来にわたって実現するとともに、教師一人一人が、持続可能な学校教育の中で、自らの人間性や創造性を高め、教師自身のウェルビーイング(Well-being)を実現し、子供たちに対してより効果的な教育活動を行うことができるようにするためにも、「新たな教師の学びの姿」の実現に向けて、教員免許更新制を発展的に解消することを文部科学省において検討することが適当であると考える。また、この措置のタイミングについては、Ⅳ.2.の「新たな教師の学びの姿」を実現するための当面の方策の実施と同時であることが適当である。その際、既に授与された教員免許の有効期間の在り方等については、文部科学省において法制的な観点から検討を深めていく必要がある。」

 教員免許更新制が導入された時と現在では、社会そのものが大きく変化している。今の制度のままではうまくいかないのは明らかだ。それゆえ、教員の学びをより充実させた「令和の日本型学校教育を担う教師として」の学びの姿を実現するために、現在の制度を発展的に解消していく。新制度と現制度の入れ替わりは同時に速やかに行っていくことになる。

 資料は、以下参照であるが、特に上記の文がある審議のまとめ(案)を参照されたい。

 https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2020/1422489_00019.html

 ちなみに審議のまとめ(案)では、以下の「3つの仕組み」が必要とされている。

 

 『「新たな教師の学びの姿」をより高度な形で実現するためには、教育委員会等が実施する研修だけでなく、大学や民間事業者等が提供するプログラムも含めて、

①明確な到達目標が設定され、到達目標に沿った内容を備えている質の高いものとなるように、学習コンテンツの質保証を行う仕組み、

②学習コンテンツ全体を見渡して、ワンストップ的に情報を集約しつつ、適切に整理・提供するプラットフォームのような仕組み、

③学びの成果を可視化するため、個別のテーマを体系的に学んだことを、全国的な観点から質が保証されたものとして証明する仕組み
という「3つの仕組み」を一体的に構築することを具体的に構想していくことが必要である。』

 

 具体的な見通しは、前回、「私なら、更新講習をこうする」を書いたが、それぞれの項目に前回の私の見解を再掲するとともに、追記と補足をする。◆が追記事項。そして、◎は審議のまとめを聞いての補足になる。併せて参照していただければと思う。最後には、衆参両院の更新講習を決議した際の附帯決議も載せておいたので最後までぜひお付き合いください。

 

1.全般

 更新講習制度をなくすのではなく、現在運用している更新講習制度を抜本的に変えることで、教師の資質能力の確保、教師や管理職等の負担の軽減、教師の確保を妨げないことを実現する。

 また、そのための基盤として、発行された教員免許の都道府県を超えた一括管理を実施する。国はもちろん、授与権者である都道府県教育委員会、課程認定を受けている大学が協力することが重要。

◆何しろワンストップのシステムで管理することが必要だ。そして、今の時代この程度できなければ、Society5.0など言えないであろう。また、法令改正というより、省令改正で運用を見直した方がスピーディーにいくと思う。すでに更新講習講座申請データ、受講生アンケートデータなど、教職員支援機構(NITS)が一括管理しているのであるから、しっかり音頭を取ってやっていくべきだ。

◎「更新」という言葉は、発展的解消となるとなくなる可能性が大きい。つまり免許の有効期限がかつてのようになくなるのだ。しかしながら、研修は当然発展的に継続していく。「更新」という言葉がなくなるには、教育職員免許法の改正が必要となるので、それなりの時間がかかる。なにしろ、今の方法では教師の資質能力の向上には限界があるというのが委員会の結論。現時点では、更新講習がなくなってもしっかり管理して研修をやりますといっているが、あまり管理されるのもどんなものなんでしょう。主体的な学びを管理するのはなかなか難しいところだと考える。

2.更新期限

 今まで通り、10年間とする。

◆これも、法令はそのままで運用でという意図である。そもそも、期限付きでいいのかどうかという議論はまだ先でいい気がする。

◎ここは予想が外れた。更新をなくす方向で法改正が進むがどれくらいの時間がかかるであろうか。教育職員免許法改正である。結果的に、変わらない可能性もあるが……。


3.更新方法

 認定されたプログラムにて30時間以上研修することで完了。認定プログラムは、1時間1ポイントとして換算。ただし、プログラムに領域区分があり領域ごとに必要最低ポイント数の条件がある。

◆現在の必修・選択必修領域をオンライン講座(教職員支援機構、大学、教育委員会等)中心にしっかり開講して、選択領域の部分で様々なプログラム(大学や学会、民間研修機関等)を活用する。ここでNITSの新たに開発すべきシステムが力を発揮するはずである。

◎更新がなくなると、審議のまとめでは管理職がしっかりOJTはじめ教員の学びを管理することになる。もちろん、教職員支援機構がシステムを構築することになっているが、これもなかなか困難な気がする。

更新するわけではないのはわかりにくい面もある。審議のまとめに、「必ずしも主体性を有しない教師に対する対応」という項目があってその内容にも違和感を覚えるが、皆さんどうであろうか。


4.受講期間

 10年間。ただし、5年間の間に15ポイントは修得していることが条件。

◆どうしても2年にこだわるのであれば、2年間に6ポイントなどというのもありかもしれないが、できるだけわかりやすい方がいいと思う。要は10年間で30ポイント、5年間でその半分、更新までには必修ポイントをクリアしてねという感じか。そしてその状況はオンラインで免許管理者や、学校管理職が確認できる。もちろん自分のデータは自分でオンライン管理できる。

◎ここも予想が外れた。法改正をしないでできるという流れかと予測したが、更新制そのものをなくす方向になると、受講期間という概念はなくなる。しかし、管理者が恣意的に教員の学びを管理することになると、それはそれで難しい点も出てくるであろう。


5.受講対象者

 教員免許状所持者すべて

◆社会人経験を持ついろいろな方がチーム学校に参画することはぜひ進めたい。しかしながら、個人の学校経験だけで参画するのは時代の変化もあるので危険。それゆえ、参画する方の採用条件は、①教員免許取得経験者(いわゆるペーパー免許の方) ②社会人経験を活かせる方 そして、③更新講習を受講した方 にするのがいいのではないか。更新講習は講習ごとに対象者を現在より明確にし、現職教員と混合した結果、意図せず講習効果を薄めることのないようにすることに留意する。

このポイントは重要で、教員の確保に直結する。また、教員になることはなくとも、社会の構成員として教育に関わる学びは重要だと考える。

◎更新制度そのものがなくなれば、免許を取ったことがあればみな子供の前で教える可能性がある。ただし、その場合は必要な研修をするというのは当然のことだ。


6.講習会場・講習方法

 自宅での受講を基本にオンライン講習

◆自宅に関わらず、GIGAスクールで環境整備された勤務校なども受講する場所として適していると思う。また、講習によっては、外部施設を活用した選択講習などもあるので、オンラインにこだわらないことも必要かと思う。わが大学も、選択領域の講習で、動物園や、博物館や、地域の活動などと協働した講習も多く開設しているし、北海道のフィールドワークの選択講習には全国から参加者が集まる。

 ◎研修は予想通りになりそうだ。


7.受講費用

 現職教員の場合、全額公費負担。現職でない場合は、全学基本個人負担。

◆少なくとも定年にかかる更新は、公費負担にしたい。前回取り上げた資料の中で、55歳で更新があるから早期退職を考える37%もの方や、再任用の際更新がなく退職する方などはもう少しこの国の教育に協力願いたい。その回の受講費用は当然公費負担でいいのではないだろうか。そもそも、この制度ができるときに検討するはずだった案件でもあるのだから。

◎受講費用をどこが負担するかには触れていない。単に負担が大変だというのみである。個人的には解せない。更新制度はそのままで、以下に示した附帯決議をしっかり実行することが個人的には、混乱もなく良いと思うのだが、皆さんはどうであろうか。

 

 ※3つの仕組みについて

 おそらく、①と③は「教職大学院での学び」、「教員免許の専修免許状化」を中心に取り組まれ、②に関しては教職員支援機構が取り組むことになると考えられる。

 

 

 そして、上記の私の検討が妥当な理由の一つを示す。以下は更新講習に関する法令ができたときの附帯決議の一部だ。

衆議院 附帯決議(平成一九年五月一七日) 更新講習関連部分

 

政府及び関係者は、本法の施行に当たって、次の事項について特段の配慮をすべきである。

七 教員免許更新制の円滑な実施に向け、教員及びその他の免許状保持者等に対して制度の十分な周知を図ること。

八 免許状更新講習の受講負担を軽減するため、講習受講の費用負担も含めて国による支援策を検討するとともに、へき地等に勤務する教員のための講習受講の機会の確保に努めること。

 

参議院 附帯決議(平成一九年六月一九日) 更新講習関連部分

 

政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

十一、教員免許更新制の円滑な実施に向け、教員及びその他の免許状保持者等に対して制度の十分な周知を図ること。また、更新制の導入に伴う免許状授与原簿の管理システムの構築と運用に当たっては、遺漏なきよう万全を期すること。

十二、国公私立のすべての教員の免許状更新講習の受講に伴う費用負担を軽減するため、受講者の講習受講の費用負担も含めて、国による支援策を検討すること。

十三、教員の資質能力の向上という免許状更新制度の趣旨を踏まえ、任命権者は、学校現場の実態に即し、各教員の受講期間を的確に把握し、教員の安全と健康に配慮しながら受講機会の確保とともに受講時の服務の取扱いについても必要な配慮を行うこと。

十四、免許状更新講習の内容については、受講者に対する事前アンケート調査の実施、講習修了後の受講者による事後評価及びこれらの公表を行うなど、受講者のニーズの反映に努めること。また、多様な講習内容、講習方法の中から受講者が選択できるような工夫を講ずること。

十五、へき地等に勤務する教員や障がいを有する教員が、多様な免許状更新講習を受講できるよう努めること。

十六、現職研修と免許状更新講習との整合性の確保、特に十年経験者研修の在り方について検討すること。

十七、法施行後の実施状況を見極めた上で、現職教員以外の者であって教員免許状を授与されたことのある者の免許状更新講習の受講要件を拡大する方向で検討すること。

 

 参議院の17をはじめ、どの項目も今を見通している。

 先達の「だから早くしろって言ったでしょうが」という声が聞こえてくるようだ。

 なにしろ、「教師の資質能力の確保」「教師や管理職等の負担の軽減」「教師の確保を妨げないこと」をクリアしなければならないのだ。特に、三番目の教師の確保はできないでは済まされない課題なのだ。

 前回の繰り返しになるが、教師とは以下のような職業だということを大いにPRできるような環境を整えたらいかがであろうかというのが私の提案だ。

 

 「教員の日常は大変かもしれないけど、まとまった休みがある。」

 「それなりの給与が保証される。」

 「なにしろ、やりがいは十分すぎるほどある。毎日が学びだ!」

 

 こんな生き方をしたいという方、壮年者も含めてそこそこいそうな気がするのだが、皆さんいかがお考えになるだろうか。ちなみに、私も自分の人生の最後のステージで今一度現場で活動してみたいと思っている口である。

 

 上記に加えて、新卒者向けには、学生支援機構からの奨学金の返還にも配慮することが優秀な人材確保には必要かと思う。私も、なかなか経済的に厳しい環境であったので、日本育英会(現日本学生支援機構)の奨学金にはお世話になった。仕送り0円の中で、生命を繋ぐのに支給いただいたことには感謝しかない。卒業後返還免除の適用は技能教育施設では適用されなかったのがショックであったが、結婚を機に貯めておいたお金で一括返還したのを思い出す。現在、学生支援機構の仕組みでは、返還免除になるには、大学院(修士課程・専門職学位課程・博士(後期)課程)修了の優秀な成果を収めた人だけだ。ぜひ、かつての様に教員として未来創造に責任をもって携わる方にも免除を適用していくことが必要なのではないか。今の理屈でも、教職大学院に行って教員になれば免除されそうではあるが、そんな数では足りないのではないだろうか。


(著者紹介)
松本 幸広(まつもと ゆきひろ)
 埼玉県秩父郡長瀞町出身のチチビアン。学生時代宮澤保夫が創設した「ツルセミ」に参加。大学卒業後宮澤学園(現星槎学園)において発達に課題のあるこども達を含めた環境でインクルーシブな教育実践を行う。その後、山口薫とともに星槎大学の創設に従事し、いわゆるグレーゾーンのこども達の指導にあたる人たちの養成を行う。星槎大学においては、各種教員免許の設置をおこない、星槎大学大学院の開設も行う。「日本の先生を応援する」というコンセプトで制度開始時から更新講習に取り組んでいる。新たな取り組みである、「1day講習」の講師も務める。



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