そして具体的内容として以下の事項が続く。
1.免許状更新講習開設数の不足等に関連した修了確認期限等の延期又は延長に係る取扱いについて
(1)延期又は延長を行う場合の考え方について
(2)延期又は延長の手続きについて
2.免許状更新講習の領域を撤廃する省令改正の取りやめ及び免許状が失効・休眠状態にある現職教員ではない者に対する臨時免許状の発行について
3.省令改正の取りやめによる免許状更新講習の認定等の申請について(主に講習開設者向け)
4.修了確認期限等を7月1日以降に迎える者の取り扱いについて
そして、3にあるように久々に驚いた記述がその中にあった。以下の部分である。(下線はママ) (上記 2 に関して) 令和3年11 月29 日付「令和4年度免許状更新講習の認定申請等について(通知)」(3教 教人第 30 号)において、令和4年度の免許状更新講習については、「必修」・「選択必修」・「選択」の3つの領域を撤廃する省令改正を行う予定である旨を通知したところですが、上記の通り延期又は延長を行うこととして差し支えないこととするため、本省令の改正を取りやめることといたしました。 (上記 3 に関して) 令和4年度の認定申請については領域の撤廃を前提とした申請(全て選択領域から申請するなど)としていたところですが、省令改正の取りやめにより、従前のとおり3つの領域及び領域ごとに設定された必要受講時間が残ることとなったことから、今後は下記の取り扱いに変更します。 ○令和4年度第3回(2月16日申請締切)までに申請された講習については、全て「選択領域」として取り扱います。ただし、開設者の希望により、他の領域に変更を希望する場合は、通常の手続(廃止届提出後に再申請)によることなく、文部科学省に電子メールにてお申し出いただければ対応します。 |
気になる、4の部分は「修了確認期限等を7月1日以降に迎える者の取り扱いについては必要に応じて別途通知します。」との記載のみである。
ちょっと雑な言い方になるが、「改正法も通りそうだし、開設予定数も少ないし、だったら「免許状更新講習規則」改正など面倒なことやるのをやめました」と聞こえる。
前回このコラムでも書いたが、「令和4年度における免許状更新講習の開設については、これらの見込み(法令改正)等を考慮した上で、ご判断いただきますようお願いします。」というのは、このようなことだったのか。1回目の申請は見送ったが、2回目申請で、少しでも良かれと思って、1day講習の枠組みを使うことで、より充実した講習ができるように準備した。講習内容を0から見直し、テキストにはあらたに数十ページを加筆した。「他の領域に変更を希望する場合は、お申し出いただければ」ではない。少しは申し訳なさそうにしたらどうなのかと声を荒らげたくもなる。
しかしながら、改正されないのであれば「選択領域」だけでなく「必修領域」「選択必修領域」も必要なのだ。となると、我々の実施すべき趣旨である「日本の先生を応援する」ためには、再度講習内容とテキストを修正するしかない。募集は3月16日からなので、大急ぎで見直して文部科学省に連絡しなければならない。
ということで、早速今晩から夜なべをして今週中には改訂を行って、来週には連絡できるようにせねばならないこととなった。しかし、免許法に関しては「更新講習」に係る部分を削除する改正であろうが、教育公務員特例法は具体的にどこを改正するのであろうか。第四章の研修を改正するのであろうが、今まで再三言ってきたように、あまりがっちりした管理の方向に進むのは教育という場ではいかがかと考えている。
おそらく、審議のまとめにあったように、「適切な目標設定・現状把握、学習成果の評価とその可視化」「任命権者、服務監督権者、学校管理職が教師と積極的な「対話」をすること」「主体性を有しない教師への対応」あたりが明記されるのであろう。
しかし、思い出してほしいのは今回の議論の目的である。
更新制度見直しの目的は「教師の資質能力の確保」「教師や管理職等の負担の軽減」「教師の確保を妨げないこと」だった。正直、どこでこうなったのか。今回の改正で、その目的は達成できるのであろうか。個人的には、「免許更新制高度化のための調査研究事業」の結果の都合のよい解釈があった気がしてしょうがない。この辺りは「
どうなる教員免許更新制 2 (2021/7/20)」あたりに詳しく書いてあるが、調査書曰く「受講した更新講習の受講直後の内容面に限った満足度は、「満足」と「やや満足」の合計が過半を占めており、「不満」および「やや不満」はそれぞれ8.1%、8.0%と低く、半数以上が内容的に満足しているといえる。しかしながら、時間負担や費用負担等を踏まえた総合満足度については、「満足」と「やや満足」の合計が19.1%にとどまる一方で、「不満」が39.0%、「やや不満」も19.5%と、ネガティブな回答の合計が58.5%と過半を占めていた。」という記載から更新講習廃止になるまでずいぶん飛躍した議論だった気がする。だったら、オンラインを積極的に使えば解決するではないかと思う。
参考に、2021年度の星槎大学の1day講習の事後アンケート結果では以下のようになっている。評価は、以下のような回答を( )内に示す4点満点で換算してある。
「良い・十分満足した・十分成果を得られた」(4点)
「だいたい良い・満足した・成果を得られた」(3点)
「あまり十分でない・あまり満足しなかった・あまり成果を得られなかった」(2点)
「不十分・満足しなかった・成果を得られなかった」(1点)
項目 | 必修 | 選択必修 | 選択 | 肯定回答率 |
講習の内容・方法 | 3.62 | 3.67 | 3.69 | 97.6% |
あなたの最新の知識・習得の成果 | 3.58 | 3.68 | 3.66 | 98.0% |
運営面(受講者数・会場・連絡等) | 3.68 | 3.73 | 3.74 | 98.8% |
この結果を見るにつけ、今回の議論の結果が解せないのである。そして、パブリックコメントにも精一杯書いてみたが、それもむなしいことになった。この件は、2021/11/22の「
どうなる更新講習制 リターンズ3」をぜひ見てほしい。
なにしろ私が気になっているのは、杞憂であってほしいのだが、今回の法改正で、教員を管理により学ばせるという、新学習指導要領の思いとは真逆な方向になってしまうことだ。極端な言い方になるが、主体的な深い学びが進展し、多様性を認めていくというあるべき姿に反することになる可能性があるのではないか。なにしろ、もっと、人間を、教員を信じていける寛容な社会となるよう願っている。
今回も、忘れないようにここにも書きますが、手段が目的化しないことを祈っている。せっかくの機会なので、この際あれもこれもやっておけというのはやめた方がいい。
毎度毎度の繰り返しになるが、教師の確保のために、教師とは以下のような職業だということを大いにPRできるように環境を整え、実現したらどうか。
「教員の日常は大変かもしれないけど、まとまった休みがある。」
「それなりの給与が保証される。」
「なにしろ、やりがいは十分すぎるほどある。毎日が学びだ!」
こんな生き方をしたいという方は、壮年者も含めてそれなりの数がいそうな気がするのだが、皆さんいかがお考えになるだろうか。今回もまたまた宣言するが、私も自分の人生の最後のステージで今一度現場で活動してみたいと思っている口である。
上記に加えて、新卒者向けには、学生支援機構からの奨学金の返還にも配慮することを示してほしい。
現在、学生支援機構の仕組みでは、返還免除になるには、大学院(修士課程・専門職学位課程・博士(後期)課程)修了の優秀な成果を収めた人だけだ。ぜひ、かつての様に教員として未来創造に責任をもって携わる方にも免除を適用していくことが必要なのではないか。
(スケジュール予測)
法案提出 2022年2月(最速6月改正法成立 7月施行)
2022年度受講対象者は、法令施行しだい制度適用見込み
研修新制度開始 2023年度
(著者紹介) 松本 幸広(まつもと ゆきひろ) 埼玉県秩父郡長瀞町出身のチチビアン。学生時代宮澤保夫が創設した「ツルセミ」に参加。大学卒業後宮澤学園(現星槎学園)において発達に課題のあるこども達を含めた環境でインクルーシブな教育実践を行う。その後、山口薫とともに星槎大学の創設に従事し、いわゆるグレーゾーンのこども達の指導にあたる人たちの養成を行う。星槎大学においては、各種教員免許課程の設置をおこない、星槎大学大学院の開設も行う。「日本の先生を応援する」というコンセプトで制度開始時から更新講習に取り組んでいる。新たな取り組みである、「 1day講習」の講師も務める。 |